音楽映画にはたくさんのジャンルがあります。
大人の恋愛だったり、指導系だったり、伝記だったり、青春だったり。
どれもがそれぞれに輝く部分を持っています。
音楽映画の中で『シング・ストリート』はジャンル分けするなら恋愛+青春でしょうか。
青春の中に恋愛は入ると思うので、本作は青春音楽映画ですかね。
近年公開されている映画の中では最も支持されている音楽映画なのではないでしょうか。
「音楽映画何が好き?」と聞けばさ10人中、最低5人くらいは本作を最初に答えそうです。
次いで『はじまりのうた』(13)などでしょうか。
好みの問題もあるかもしれませんが、『シングストリート』『はじまりのうた』は共にジョン・カーニー(John Carney)監督の作品です。
彼の作品が楽しみなのですが次はどんな映画を撮るのか今は興味津々です。
また、どちらの作品にもマルーン5(Maroon 5)のアダム・レヴィーンが関わっています。
『シング・ストリート』ではラストの海のシーンで流れる"Go Now"が主題歌として使われています。
最高でしたね。
主に音楽を中心に青春時代の様々な感情をロックを混ぜながらも非常に滑らかに、繊細に描いた本作の感想を今回は解説も交えて紹介します。
ちなみにロッテントマトの『シング・ストリート』評価は
批評家支持率:95%
観客満足度:92%
と、稀に見る高さとなっています。
『シング・ストリート』人生で一度は観るべき、最高の青春音楽映画
まずは『シング・ストリート』の大まかなあらすじを紹介します。
あらすじ
舞台は1985年のアイルランド、ダブリン。
コナーは不況によって家計が厳しくなったことにより、無料の公立学校(シング・ストリート高校)へと転校することになった。
決して良いとは言えない状況から脱するために彼と兄のブレダンはポップ音楽へとのめり込む。
転向してからはいじめっ子に目をつけられたり、校長からの厳しい指導で散々であった。
そんなある日、コナーは下校しようと校門を出ると向かいの建物の入り口に立っている女性に一目惚れをする。
彼女の名はラフィーナ。
コナーは彼女の気を惹くために仲良くなった友人らとバンドを組むことにした。バンド名はシングストリート。
ラフィーナの気を惹くことに成功したコナーとバンドメンバーはミュージックビデオを撮影する。
帰り際にコナーはラフィーナにキスをしようとするものの、年上の彼氏に連れて行かれてしまう…。
予告編
『シング・ストリート』の主な登場人物
本作にはバンドメンバー初め、コナーの家族などに焦点が当てられ、様々な人物が登場しました。
コナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)&ラフィーナ(ルーシー・ボイントン)
コナーはシングストリート高校に転校してきた青年で、年上のラフィーナに恋をして彼女を落とすためにバンドを組み、音楽を製作さします。
演じたのは無名俳優のフェルディア・ウォルシュ=ピーロ。
ジョン・カーニー監督同様、出身はアイルランドのダブリンです。
ラフィーナはコナーより一つ年上でワイルドな雰囲気が出ています。
演じたのはルーシー・ボイントン。
『ボヘミアン・ラプソディ』(18)に出演し、フレディ・マーキュリーの恋人役を演じました。
主演のラミ・マレックとの交際も明らかになり、話題になりました。
ブレンダン(ジャック・レイナー)
コナーの兄でロックなキャラクターです。弟思いで最高の兄ちゃんって感じです。
彼を演じたのはジャック・レイナーでこれまでに『トランスフォーマー/ロストエイジ』に出演しています。
最近だとA24作品のホラー映画として話題になった『ミッドサマー』(19)で重要な役柄を演じました。
『シング・ストリート』の感想と考察-優しい感情につつまれた一生ものの映画!

出典:シング・ストリート公式サイト
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まずは全体的な感想からです。
ロマンチスト的物語な気もする本作ですが、それが映画ファンの心を鷲掴みにしている理由だと思いました。
まさに一生ものの映画です。
また、物語の設定も初めから万人に好かれるような内容です。
転校生が、年上の気になる女の子に好かれるためにバンドを組み、彼女のために音楽を奏で、紆余曲折あるものの最後は2人で海を越えロンドンへ。
いや、最高すぎます。
しかも最後はマルーン5のアダム・レヴィーンの切ないような優しいようなだけど希望に満ちた音楽が流れるわけですよね。
感動するに決まってますよね。
この類の映画は意見があまり割れることなく80%かそれ以上の人が好印象を持つものです。
しかも、あくまでも青春音楽映画ですから観終わった後にサントラなどをループしようものならじわじわと心地の良い感情に浸ることができることを約束されています。
毎回思うのですが、音楽映画ってサントラを聴いて復習できるところが映画自体の平均点を上げていますよね。
普通の映画だったら観て、ちょっと考察記事読んで終わり。みたいな感じになってしまうことが多いです。
音楽映画ならサントラで復習すると、この音楽が流れていたシーンはあーだったな、こーだったなって思い出せます。
そうすることで、より映画への愛着も理解度も深まります。
ちょっぴりずるいですね。でも私含め、好きな人が多いのはきっと音楽という素晴らしいエンタメの力でしょう。
映画+音楽はエンタメ界のチートみたいなもんですね。
『シング・ストリート』は監督の実話?
余談ですが本作は出来すぎた話であって、どこかありそうな話だなと感じた人も多いのではないでしょうか。
本作は『シング・ストリート』の監督であるジョン・カーニーが幼少期を過ごしたアイルランドの首都ダブリンでの暮らしを元に描いたんだそうです。
それもそのはず。
彼はアイルランドのダブリン生まれで、シング・ストリート・クリスチャン・ブラザーズ・スクールで教育を受けています。
また、彼はロックグループに所属し、ベースを担当、加えてバンドのミュージックビデオの監督も担当したそうです。
まさに物語でのコナーですね。
つまり本作はジョン・カーニー監督の実話というよりも、半自伝のような物語となっています。
また、これまでの『Onceダブリンの街角で』や本作によって監督はダブリンという街にとても愛着があるのだということがわかります。
とにかく兄ちゃんがいいやつすぎる
映画の完成度を決めるのは脇役であることも多いです。
脇がしまってることは何においても良いことだと思うのですが本作のバンドメンバーとラフィーナが主要キャラだとすると、脇役の中心は兄です。
『シング・ストリート』の兄ちゃん役はめちゃくちゃよかったですよね。
兄弟が登場する映画では兄がめちゃくちゃいい奴か、めちゃくちゃクソであるのことがほとんどですが、本作は最高でした。
Netflixオリジナルシリーズの『ストレンジャー・シングス』でのバイヤーズ兄弟に近しい部分を感じました。
特に、ラストで自分が果たせなかった夢を弟に託し、喜びを爆発させているところにほっこりしました。
中盤やラストのミュージックビデオのような展開について
『シング・ストリート』には1980年代に人気を博したザ・キュアー、a-ha、デュラン・デュラン、ザ・クラッシュ、ホール&オーツ、スパンダー・バレエ、ザ・ジャムといった多くのアーティストの楽曲が使用されました。
中でも物語の顔のような曲となったのがバンドとしての「シング・ストリート」が演奏する“Drive It Like You Stole it”やマルーン5のアダム・レヴィーンの楽曲で主題歌として使用された“Go Now”です。
これらの楽曲が流れるシーンはほとんどMVのようになっていました。
まず、“Drive It Like You Stole it”ですが、これはもはや完全なるMVでしたよね。
登場人物の髪型や、性格、関係性までもが物語とは異なる描写がありました。
特に校長先生がバク転しているシーンが印象的でした。
ここはミュージカル映画に共通するいきなり始まる、フラッシュモブ的な要素でした。
もう一つがコナーとラフィーナがモーターボートでウェールズへと向かう、物語のラストでアダム・ラヴィーンの“Go Now”が流れるシーンです。
このシーンは音楽と映画的には結果的になくてはならないシーンではあるものの、少しだけ要らないかなという気もしました。
要らないというより違和感でしょうか。
きっとこの違和感がMV的演出によるものだと思うのですが、50キロの距離を小さなモーターボートで、かつ荒波の中向こう岸に辿り着くのは不可能な気がします。
また、このシーンのCGも雑な気がしました。
ですがこのシーンでの観客の胸の高鳴りは最高潮だったかと思います。
加えて、このシーンによって兄の想いも達成されるわけなので必要不可欠ですね。
様々なことを天秤にかけた結果、ラストのシーンは映画にとってなくてはならないものであり、作品自体の価値も高めたと思います。
様々な世代から支持される『シング・ストリート』、監督のジョン・カーニーは次にどんな感動を私たちに届けてくれるのでしょうか。楽しみですね。
ちなみに、Amazonプライムビデオのみでしか観ることができないのですがカーニー監督のショートドラマシリーズ『モダン・ラブ〜今日もNYの街角で〜』もめちゃくちゃ良いのでおすすめです。
【作品情報】
タイトル/『シングス・トリート 未来へのうた(原題:Sing Street』
監督/ジョン・カーニー
出演者/フェルディア・ウォルシュ=ピーロ,ルーシー・ボイントン,マリア・ドイル・ケネディ,エイダン・ギレン,ジャック・レイナー
配給/ワインスタイン・カンパニー,ライオンズゲート,ギャガ
上映時間/105分
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