映画『サヨナラまでの30分』は新田真剣佑、北村匠海はじめ、今大注目若手俳優が個性豊かなキャラクターを演じた、少し不思議な物語だ。本作の伝えたかったことを考察すると共に歌に合わせたミュージックビデオのような映像に迫る。
『サヨナラまでの30分』は歌に合わせたまるでミュージックビデオのような映画だった。
本作の注目すべき点は音楽だ。メジャーデビューを控えていた「ECHOLL」のボーカル、アキの突然の死から1年後。バンドメンバーの前に現れたのは圧倒的な歌唱力を持つ颯太だ。初めはメンバーから敬遠されていた颯太だがその憎めない性格と美しい歌声に魅せられ、徐々に心を開いていく。
バンドメンバーの物語であるだけに、劇中の楽曲には非常に力が込められていたといえる。特に歌に呼応したかのような彼らの表情、風景はまるでなにかのミュージックビデオであるかのようだった。
それもそのはず。本作の撮影を担当したのは2018年から2019年に最も歌われた米津玄師の「Lemon」のPVを製作した、今村圭佑だ。
今村圭佑さんは、これまでに多数の企業のCMの撮影を務めた他、昨年公開の映画『新聞記者』や『ホットギミック・ガールミーツボーイ』の撮影も担当している今最も注目のカメラマンだ。
特に、冒頭のカメラワークに加え、劇中メインの楽曲の流れるシーンは圧巻だったので注目していただきたいポイントの一つだ。
『サヨナラまでの30分』が伝えたかったこととは(ネタバレあり)

©2020『サヨナラまでの30分』製作委員会
果たして、本作の伝えたかったこととは一体何なのだろうか。物語全体の印象としては、死んでしまったアキの颯太に対する感情、アキとは正反対の性格の颯太のアキに対する感情と彼らのバンドメンバーに対する感情が非常に繊細に描かれており、それがぶつかり合うことによって生まれる彼らの表情が非常に印象的であった。
そもそも本作はカセットテープが重要な鍵を握っている。そしてアキの姿は「音と共にアキがバンドメンバーと過ごした時の記憶」が具現化したものだとされている。こうしたことからカセットテープに関する様々な話が繰り広げられた。
特に印象的だったことはカセットテープには新しく録音しても過去に記録した微かな音が残っているという説明があったことだ。このことにハッとさせられた人も多かったのではないだろうか。
結論からいうと本作の伝えたかったことは、カセットテープが過去の音を記憶しているように、これまでの経験や体験は必ず自分たちにとっての糧となっている。その上で、思い切って新しいことに挑戦することの大切さであると考える。
果たして、バンドメンバーは過去を乗り越え颯太を受け入れたのだ。
映画『サヨナラまでの30分』使用楽曲(サウンドトラック)紹介
本作の楽曲は様々なアーティストによる提供によるもので、素晴らしい歌ばかりであった。元々バンドのメインボーカルであった北村匠海の歌声は文句なしのものであったが、新田真剣佑の歌唱力も素晴らしかった。最後に本作のサウンドトラックの楽曲タイトルを紹介しておく。
「目を覚ましてよ」
「もう二度と」
「風と星」
「真昼の星座」
「瞬間」
▼作品詳細
タイトル/『サヨナラまでの30分』
監督/萩原健太郎
脚本/大島里美
製作/井手陽子,豊島雅郎,茨木政彦
出演者/新田真剣佑,北村匠海,久保田紗友,葉山奨之,上杉柊平,清原翔,牧瀬里穂,筒井道隆,松重豊
音楽/Rayons
撮影/今村圭佑
編集/平井健一
配給/アスミック・エース
公開日/2020年1月24日
上映時間/114分
公式サイト
©2020『サヨナラまでの30分』製作委員会