クエンティン・タランティーノ監督といえば、最近だとシャロンテート事件を題材に大胆な展開で描いた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』がゴールデングローブ賞で作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を獲得しました。
そんな彼のフィルモグラフィーの礎となったのが本作、『レザボア・ドッグス』(92)です。
ちなみに、この映画にはタランティーノ監督自身も出演しており、監督、脚本、出演の3つを務めました。
また、『レザボア・ドッグス』は自主制作映画(インディペンデント映画)でもあり、その類の映画で成功を収めた作品では他にも『メメント』『ユージュアル・サスペクツ』などが知られています。個人的にこの辺の映画非常に好きです。
どことなくいかしたビジュアルと、スタイリッシュな音楽で公開当時から現在まで一定の支持を集める作品です。
かなり残虐な描写があるのは置いといて、時間軸の操り方や、人間味のある駆け引きが最高でした。
記事内画像出典:Rotten Tomatoes
映画『レザボア・ドッグス』あらすじ-既に感じるタランティーノ臭
本作は時間軸が回想シーンによって入り乱れる展開で進行して行きます。
ここでは映画の流れではなく作戦を立てる流れであらすじを超簡潔述べていきます。
【起】
フレディ(オレンジ)は潜入捜査のために準備をして、ジョーに近づく。
ジョーの宝石強奪作戦の一員としてMr.Orangeとなる。
計画当日、ダイナーにメンバーが集結し、作戦決行となる。
【承】
作戦中、警報が鳴り。
車を運転していたブラウンは死亡、オレンジは逃走中に撃たれてしまう。
ホワイトはオレンジを介抱しながら逃走。
【転】
倉庫に到着したホワイトとオレンジ、そしてピンク。
死にかけのオレンジについてもめる2人。
ブロンドも到着し、警察を捕らえて裏切り者を明かすよう拷問する。
エディが到着し、ホワイトとピンクは彼が倉庫から連れ出す。
そしてオレンジはブロンドを銃殺。
この後のオレンジと警官の会話でオレンジ自身が警察の犬であると発覚。
【結】
何も知らないジョー、エディ、ホワイト、ピンクが倉庫に再び到着。
ブロンドが死んでいるのを見て、ジョーとエディはオレンジが警察の犬だと確信する。
しかしホワイトはそれを否定。
ジョー、ホワイト、エディが相撃ちをして倒れる。この時点でジョーとエディは死亡。
ピンクはそのまま倉庫から逃走。
警察が突入し、自分が警察の犬だと明かしたオレンジをホワイトが撃ち、ホワイトは警察に撃たれる。
めちゃくちゃ凄いですよね。結果逃走したピンクとよくわからないブルー以外死亡しています。
とんでもない展開の映画です。
また、物語が倉庫を起点にシャッフルされるように人が出入りするのも面白いです。
映画『レザボア・ドッグス』登場人物-色で表現する斬新さ
本作に登場するのは具体的には以下のような色で呼ばれる人物と頭である親父と息子です。
- ジョー
- エディ
- Mr.Brown(ブラウン)
- Mr.White(ホワイト)
- Mr.Blonde(ブロンド)
- Mr.Blue(ブルー)
- Mr.Orange(オレンジ)
- Mr.Pink(ピンク)
色で人物名を分けるのは斬新ですね。なんか洒落てます。
この他にもMr.Purple(パープル)と呼ばれる人物もいるみたいです。これに関してはジョーの他の作戦に参加している人なので関係ないです。
物語で重要なのはオレンジ、ホワイト、ブロンド、ピンクぐらいですかね。
あとはエディです。

映画『レザボア・ドッグス』感想-オープニングから最高すぎる※ネタバレあり
全体的な感想からです。
とにかくまず、オープニングから最高すぎます。
しかしラストはクソすぎる。だがそれがいい。のか?
そんな映画です。
先述しましたが、小さな空間である倉庫で人々がシャッフルされるように出入りするのも面白いです。
でも肝心のババは常に倉庫にいるんですよね。
また、本作は1992年にタランティーノ監督が初めて製作し、その後『パルプ・フィクション』(94)『キル・ビル』二部作(03)といった多くの名作を世に送り出す、礎となった作品といえるでしょう。
つまり本作がはちゃめちゃ大胆破天荒な作風のタランティーノ監督作品の入門と言えます。
タランティーノ監督作品ならとりあえず『レザボア・ドッグス』を観て、そこから他の作品を摘んでいけば良いでしょう。
そんなことは置いといて、本作のポイントを整理しておきましょう。以下です。
- 時間軸の構成について
- オープニングについて
- ラストについて
今回はこの3つのポイントに絞って感想と解説を述べたいと思います。
完璧な構成の時間軸の振動
本作の最大の見どころの一つがやはり、物語の展開をシャッフルしつつ、リアルタイムで進んでいる感を出しているところです。
『パルプ・フィクション』もそうですが、時間軸をシャッフルするだけでこれほど展開に深みが出るのかと毎度感じます。
『レザボア・ドッグス』の時間軸の進み方は大まかには以下です。
- 宝石強奪計画開始
- 倉庫の中で常に物語は進行
- 計画を立てるまでの過程とそれぞれの人となり(回想)
- ラスト
物語の中核となるのは倉庫の中での場面です。この場面は常に進行し続けています。
分かりやすく言うと、倉庫のシーンがリアルタイムでその他が回想です。
全てが宝石強奪計画に直結する回想なので、計画全体が時間軸を切り刻んでばらまいたような構成になっています。
オレンジが計画実行中に銃で撃たれ、倉庫へと向かうシーンが始まりで、そこに行き着くまでの流れを回想しつつ物語は倉庫の中で進行していきます。
中核となる物語は進行させながら、回想シーンをばら撒いていくシーンは割と斬新だと思います。
もし回想シーンをどこかでまとめてしまうと、倉庫のシーンのリアルタイム感や緊張感がなくなってしまうからです。
これが、この物語に深みが出ている要因です。
そして、それぞれの人物の回想がされた後にラストで計画中に死んだ人(ブラウン)と消えた人以外が倉庫に集結します。
ラストについては後述します。
オープニングからかっこよすぎる

もう一つの見所がやはり、映画のオープニングでしょう。
彼らがレストラン(ダイナー)で話をした後に、スーツ姿でアベンジャーズのアッセンブル風に歩いて行くシーンが最高にいかしています。
『レザボア・ドッグス』と聞けばこのシーンが真っ先に脳裏に浮かびます。
バックで流れるのは『リトル・グリーン・バッグ』。この楽曲は本作が評価される上でも非常に重要なキーとなっています。
テレビを見ていると様々なところでこの楽曲が使われているのをみかけます。
最近だと麒麟ビールのCM楽曲として使われていました。
スーツ姿でサングラスをかけて集団で悪そうな人が歩いていたら怖いと言うのもありますが、やけにきっちり着こなしていると逆にかっこいいです。
ラストがクソすぎる。垣間見える人間味。
本作で最も印象的なシーンが、ラストの相撃ちです。
オレンジが裏切り者(警察の犬)だと確信したジョーが銃を向け、それを阻止するべくホワイトがジョーに銃を向け、親父を守るためにエディがホワイトに銃を向けます。
そして僅か1秒の間に銃口を誰かに向けていた人は全員撃ち抜かれて倒れてしまいます。
本作の最大の見せ場がここなのですが、最大の謎もここです。
銃口を誰かに向けていた人が全員倒れたと言いましたが、エディ対して銃口をむけていたのはいったい誰なのか問題です。
様々な議論があるみたいですが、この強烈なシーンをもう一度見返してみれば分かります。
よく見るとこんな感じの流れになっていました。
- ジョーがオレンジを撃つ
- ホワイトがジョーを撃つ
- ホワイトがエディを撃つ&エディがホワイトを撃つ
つまり、ホワイトの速技でこのシーンが成り立っていたのです。
ジョーがオレンジを撃ったと認識した瞬間に、ホワイトがジョーを撃ち、エディに銃口を向けられているホワイトは身を守るためにエディも撃ったのです。それと同時にエディもホワイトに向かって発砲しています。
なかなかの腕前です。
エディが1人打つのとほぼ同じ間にホワイトは2人撃ってます。
しかも、ホワイトに撃たれた2人は即死しています。逆にホワイトは生きている、つまり急所を撃たれることを回避しています。
これは、一瞬早くホワイトがエディを撃っているのでエディの銃口がずれたからではないかと考えられます。
となると、ホワイトはめちゃくちゃ速いですね。
そしてもう一つ見応えがあったのが、オレンジを信じ続けていたホワイトが彼の正体を知った時の表情です。
オレンジが最終的に死にかけのホワイトに対して自ら告白するのですが、個人的には「いや、言うなよ!」って思いました。
ホワイト、本当に可哀想すぎました。
そしてクソすぎます。
ホワイトが可哀想すぎるこのシーンのおかげで、『レザボア・ドッグス』という作品に登場するキャラクターの深み(人間味)が増した気がしました。
最終的にはそのあと警察が倉庫に突入し、一発の銃声が聞こえ、その次に多くの銃声が聞こえます。
一発目は絶望したホワイトが、オレンジを発砲、多くの銃声は警察がホワイトを発砲した音だと個人的には考えています。
とにかくかなり見応えがあり、よくできた作品でしたのでオールタイムベスト10に入れる人も多いのではないでしょうか。
ちなみに物語の冒頭でマドンナの楽曲について語るシーンがありますが、あれはタランティー監督自身の意見で、マドンナから後にダメ出しされたそうです。