社会的病質者、広義的意味でサイコパスといわれるような人物を描いた『ナイトクローラー』はトロント国際映画祭にて招待作品として上映されるなど一定の評価を得ている作品です。
ジェイク・ジレンホールのなんとも言えない塩梅の演技も功を奏し、なかなか見応えのある作品となっていました。
本作を観て、サイコパスの存在を改めて認識し、その存在について興味を持った人も多いのではないでしょうか。
私もやはり非常に興味深く感じたので様々なことを調べた上で、感想・考察を行ってみることにしました。
映画『ナイトクローラー』あらすじ-サイコパスはいかにして誕生するのか。はたまた…。
まずは全体的なあらすじをざっと振り返ってみましょう。
あらすじ
ルイス・ブルームは工事現場からフェンスを盗み、売り捌こうとするも警備員に見つかってしまう。
警備員を襲い、逃走。
仕事を求めるもの泥棒は雇わないと言われ、断られてしまう。
そんなある日、たまたま居合わせた事故現場で事故映像を売り捌くフリーランスの仕事を知り、スクープ映像を撮る方法を学び、テレビ局に売り込む方法を見つけるのであった。
予告編
映画『ナイトクローラー』感想・考察-サイコパスはいつ生まれるのか

出典:Rotten Tomatoes公式サイト
まずは全体的な感想からです。
本作で最も興味深かったのは主人公ルイス・ブルームのサイコパス的行動です。
誰からも認められなかった彼が初めて認めてもらえそうなことを見つけ、それを達成させるためにはどんな危険をも犯し、利己的に行動し、他者を犠牲にする様は圧巻でした。
加えてジェイクの不気味な表情の演技がその恐ろしさへと誘っていたと思います。
とくに同業の知り合いが事故を起こした時にここぞとばかりに撮影するシーンは強烈です。
人々の良心をねじ曲げてくるようでした。
主人公ルイス・ブルームとは一体どのような人物なのか、その正体のみに焦点を当てることで人物像を作り上げていることが本作の最大の魅力だったと思います。
サイコパス?それとも…。
本作に登場したジェイク・ジレンホール演ずるルイス・ブルームは一般的には典型的なサイコパスであると考えられます。
サイコパスとは反社会性パーソナリティ障害とも呼ばれ、基本的には一般社会に普通に馴染んでいます。
これがサイコパスと呼ばれる存在の怖いところなのですが、特徴には以下のような項目が存在します。
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コミュニケーション能力が高く表面上は好印象
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利己的・自己中心的
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他人を操ろうとする
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自慢話をしがち
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自分の非を認めない
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結果至上主義
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平気で嘘をつく
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共感することができない
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良心が欠如している
サイコパス映画といえばこれまでに
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『エスター』
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『ゴーン・ガール』
などが公開されています。
(※後ほど紹介するソシオパスの可能性あり)
いずれも強烈なインパクトを残している映画ですが、そのどれもが他者を貶め、その代償について深く考えることはないということがわかります。
どの作品も殺人の要素のある物語となっていることからサイコパスにはそのようなイメージがつきやすいのでしょうか。
劇中に登場した、ルイス・ブルームについて調べましたが先ほど紹介したサイコパスの項目をほとんどすべて満たしていました。
基本的に3つ以上の項目を満たすとサイコパスに当てはまるといわれているので彼は典型的なサイコパスであると言えます。
テレビ局の人たちには気兼ねなく挨拶をし、コミュニティケーション能力が豊かに見えました。
また、序盤でフェンスを盗んだりと利己的で自己中心的です。
自慢話をしていたかは分かりませんが、自らの記憶力に自信がありプライドが高いです。
結果にこだわり、事件現場を追いかけるパートナーを責め、操り、最後には嘘をついたことによって凶悪犯によって銃殺されてしまいます。
それに対してなんの反省もせず、これは良心の欠如にあたると考えられます。
恐ろしいほど当てはまりますね。まさにサイコパスオブサイコパスです。
基本的にこれらのサイコパス的特徴は先天的であると考えられています。
しかし、調べてみると特徴的にはほぼ同じソシオパスと呼ばれる存在も世の中にいるということがわかりました。
正確には決定づけることはできませんが、ソシオパスとサイコパスの違いは先天的か、後天的かで区別されることがあるそうです。
つまりソシオパスは後天的です。
ですから、本記事のタイトルに「サイコパスはいつ生まれるのか」とありますが基本的にはサイコパスは生まれた時からサイコパスです。
普通の人と同じように育てられ、同じような水準の生活を送っていても上記のような特徴が現れます。
それとは異なり、生まれた環境、普通ではない親に育てられたり、人格を変えてしまうような強烈な出来事を経験したりすることによって生まれるのがソシオパスです。
ソシオパス映画として考えられるのが以下のような作品です。
『時計仕掛けのオレンジ』のアレックスは強烈すぎて言わずもがなですが、ここで話題にしたいのはジョーカーです。
ちなみに日本でも人気の高い韓国ドラマ『梨泰院クラス』のチョ・イソは明確にソシオパスだとされています。
2019年に公開された『ジョーカー』は日本でも大きなヒットを果たしましたが今考えるとまるでソシオパスを紹介するような物語であったように思えます。
ジョーカーの物語を簡単に説明すると、
精神疾患を抱え、突然笑ってしまう病気があり、恋人も友人もおらず、会社もクビになり、狂気と化して行きます。
大筋は
社会に見放される→絶望→狂気化
です。そして殺人鬼へと化けていきます。
ジョーカーの場合、自暴自棄になっているところもありますが、利己的に殺害をする様はまさにソシオパスなのではないでしょうか。
その根拠として、ここで問題となってくるのがジョーカーの公開当時、彼への同情の声が多かったことです。
本来、殺人鬼=悪
と捉えられがちですが物語全体を眺めるとジョーカーは単なる悪者だと決定づけられない面も見参していました。
つまりジョーカーにそうさせた他の何かに責任があるということです。
それは言わずもがな社会です。資本主義社会の弊害、貧困問題、格差社会など色々といわれていますが、それらが要因と言えます。
つまり、ソシオパスの特徴にやはり当てはまるといえます。
サイコパスは先天的、ソシオパスは後天的であることが分かった上で『ナイトクローラー』のルイス・ブルームはどうでしょうか。
彼の場合、学歴主義、資本主義社会の弊害を受けているところもあるように思えますが、同情の余地はないように思えます。
また、あまりにもその特徴も強すぎるのでとてもジョーカーと同じであるとはいえません。
つまり彼はサイコパスです。
サイコパスは成功する経営者なのか
サイコパスというと、何故か猟奇的殺人鬼や犯罪と結びつけてしまうことが多いのですが、そのような人物は一部であるそうです。
そして、経営者はサイコパスであることがあるということをたまに耳にすることがあるのですがこれは正しいのでしょうか。
経営者に必要なのは決断力です。
正しいかどうかはさておき、同じような特徴はあると言えます。
サイコパスには他にも、自分に自信があったり、自分の意見を絶対に通したりするような特徴があります。
このような特徴は経営者にとっていつも必要ではないが、必要となる場面があります。
そのような場面でうまくその特徴が働いていると経営者として成功するのだと言えます。
実際どうかは分からないのですがサイコパスは経営者として成功するという可能性は十分あるでしょう。
『ナイトクローラー』の意味とは
ここまで『ナイトクローラー』に登場したルイス・ブルームのサイコパス気質について論じてきましたが、タイトルのナイトクローラートはどのような意味なのでしょうか。
英語では
ナイトクローラー=nightcrawler
です。
そして
night=夜
crawler=はう人
です。ナイトクローラーは夜に活動する人のことで、夜に犯罪を犯すような人のことを表すこともあるそうです。
ルイス・ブルームは夜間に事故や事件を追いかけていたので、タイトルは彼のことを表しているのは必然ですね。
タイトルには特にひねりはないようです。