『はじまりのうた』(13)『シング・ストリート』(16)で知られるジョン・カーニー製作・監督・脚本で誕生したAmazonプライム・ビデオオリジナルドラマ『モダン・ラブ』。
製作にはアメリカの新聞社ニューヨーク・タイムズも加わっています。
正確には『モダン・ラブ~今日もNYの街角で~』で、タイトルの通りニューヨークの街角で恋に落ちるカップルを描いています。
シーズン1は全8話でエピソード毎に完結するという仕掛けになっており、それぞれのエピソードに登場するカップルが異なる出会い、異なる恋愛観でとても面白い内容になっていました。
早くもシーズン2の製作が決定しているようでもう待ちきれない方も多いかと思います。
今回はシーズン1の全てのエピソードを振り返りつつレビューをしていきます。
『モダン・ラブ〜今日もNYの街角で〜』全話感想レビュー※ネタバレあり

出典:AmazonPrimeビデオ公式サイト
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『モダン・ラブ』では実に様々な種類の恋愛の形が登場し、どれも心を揺さぶるものでした。
それもそのはず、本作の脚本はニューヨーク・タイムズのコラム欄に投稿されたエピソードを基に描かれています。
また、出会いもそれぞれで異なるため、観るものを飽きさせず、各エピソード30分程度と一気見出来てしまうボリュームでした。
各エピソードのタイトルは以下の通りです。
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私の特別なドアマン
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恋のキューピッドは世話好き記者
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ありのままの私を受け入れて
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夫婦という名のラリーゲーム
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デートの幕あいは病院で
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パパみたいな人とデート?
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僕らが見つけた家族のカタチ
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人生の最終ラップはより甘く
予告編
個人的にはエピソード1の「私の特別なドアマン」とエピソード8の「人生の最終ラップはより甘く」がお気に入りです。
皆さんもお気に入りのエピソードを見つけてみるのも楽しいかもしれませんね。
キャストもアン・ハサウェイをはじめ、豪華俳優陣が固めています。
エピソード1でのドアマンが印象的だった入り込みやすい物語から始まり、アン・ハサウェイの登場するエピソード3で『ラ・ラ・ランド』(16)のようなミュージカルっぽさも出して盛り上げて、エピソード8にてニューヨークの街角で各エピソードの登場人物がすれ違うという粋な終わり方でした。
異なるエピソードを散りばめつつ最後にしっかりまとめており、ドラマであるもののまるで映画のような流れでとても良かったです。
また、オープニングの音楽・主題歌はグレイ・クラーク(Gary Clark)とジョン・カーニー(John Carney)によって手掛けられました。
タイトルはSetting Sail。
つまり、ジョン・カーニーは監督・脚本・製作に加え主題歌まで歌っています。凄いですね。
「Setting Sail」の楽曲自体も素晴らしくて、聴きまくりました。
ジョン・カーニーといえば若い頃にバンドを組み、ミュージックビデオを自ら撮影するなど音楽には深い関わりがあるのでそれを踏まえると主題歌を自ら担当してしまうのも納得ですね。
彼の若い頃に基づいて描かれた映画が皆さんもご存知であろう『シング・ストリート』(16)です。
まだ映画を観ていないという方はめちゃくちゃ良作な青春音楽映画なのでおすすめです。
ここからは各エピソードのレビューをしていこうと思います。
1話-ドアマンとの優しい物語が泣ける
まず、エピソード毎のオープニングに、ジョンカーニーのSetting Sailが流れるのでこれはやはり印象的です。
『モダン・ラブ』は各エピソードで完結してしまうのでこのオープニングの楽曲がそれぞれのエピソードにまとまりを持たせているような気がしました。
1話ではドアマンが親のように見守る女性の物語で彼女が連れてくる男に最初はケチをつけているように感じます。
しかしそれは間違いで一眼見ただけで、男を品定めし、ダメ出しする裏に隠された女性への愛情に胸が苦しくなりますね。
彼女の大変さがわかっているからこそのドアマンの行動に感動しました。
ドアマンの女性に対する感情は恋愛の愛ではなく、まるで親が愛娘を見守るような事であるとはっきりと気づいた時に泣けてきます。
つまり1話で描かれたのは
恋愛感情ではなく、誰かを見守る愛
です。
2話-記者とアプリ開発者のそれぞれの愛
2話では記者と、取材されるアプリ開発者の2人のそれぞれの愛が描かれます。
タイトルは
恋のキューピッドは世話好き記者
で、まさにその通りの展開です。
アプリ開発者の男性と知り合った女性は些細なことで別れてしまいますが、記者が書いた雑誌を読んだ彼女は彼と復縁することになりました。
男性は最初は恋愛は信頼だと語っていましたが、結局はかなり複雑な感情が交差するのでわからないですよね。
2話で描かれたのは
誰かのおかげで成り立つ愛
でしょうか。
アプリ開発者のカップルは記者のおかげで復縁できたようなものですが、8話のラストで記者の女性は男性が開発したマッチングアプリを利用する事で恋人を見つけていました。
つまりアプリ開発者と記者はそれぞれにとって恋のキューピッドとなったわけです。
なんだか素晴らしいお話ですね。
3話-アン・ハサウェイが印象的すぎる
3話で最も印象的だったのはアン・ハサウェイそのものでした。
躁鬱女性の恋愛事情について描かれているので、めちゃくちゃ楽しくて、ミュージカル的な演出から、まるで『レ・ミゼラブル』のファンティーヌのような人生のどん底のような演出まで、振り幅がかなり大きいです。
しかし流石にアン・ハサウェイ。見事に演じていました。
ここで描かれているのは言わずもがな、恋愛をするには非常に困難が待ち受ける人物の愛の形なのですが、職場の友人に救われましたね。
恋愛をすると周りに相談したり相談に乗ってくれる友人が登場することが多いですが、彼女の場合、素晴らしい友人がいました。
誰かが誰かに恋をして、その事について親しい友人に相談する。
恋をする上での悩みを打ち明ける。
ありきたりなことのように感じますが結構重要ですよね。
4話-夫婦の悩みを解決するとより深い中へ
4話では昨年配信されたNetflixの『マリッジ・ストーリー 』『クレイマー・クレイマー 』に近しい部分を感じました。
不穏な空気が流れるも、それぞれの気持ちがわかると最終的には良い方向へと向かっていく。映画で描かれる夫婦のありがちなお話です。
夫婦がお互いに不満を持っていて、それをカウンセリングでぶちまける。
この物語ではテニスという共通の趣味を半ば強引に作ることで蟠りは解消されていきます。
夫婦という名のラリーゲーム
まさにその通りでお互いの間合い、テンポを意識しながら寄り添うことが重要なのでしょう。
5話-ワンナイトのはずが、割としっくりくる
5話で描かれたのは、最近の若者に増加しているように思える一夜限りの恋、かと思いきや、割としっくりハマってしまうお話です。
カフェで初めて出会い、本来何も始まらないはずが、どちらかが話しかけることで本物の恋へと発展していくのです。
この物語では女性の方が逆ナンしたような始まり方でしたね。
お互いを少ししか知らないまま夜を過ごそうとしたら、事件が勃発。
より深くお互いを知ることになり、より深い関係へと繋がっていきます。
いつどこで出会う人がどんな人生をもたらすかわからないということをつくづく感じました。
6話-歳の差恋愛かと思いきや
この物語では若者とその親世代と歳の差のあるもの同士の恋が描かれます。
恋というより愛情でしょうか。
主人公の女性は父親に対する憧れが強く、その憧れが自分の上司へと向けられ、父親のような存在として愛情表現をしようとします。
ここでの女性は大人になり切れていないように見えるのですが、上司と過ごすうちに大人へと成長していくように感じました。
一見特殊な愛情の形のようにも見えますが、違和感なく、愛情の特殊な形や否定されるようなものは存在しないのだと実感しました。
ラストはなんだか切なかったです。
7話-家族のかたちに正解なんてない
この物語では言わずもがなLGBTQをテーマに扱っています。
最近になってやっと社会に受け入れられるようになってきたように感じます。
とはいえ昔よりは過ごしやすくなっただけのように感じ、いまだに偏見などは残っています。
7話では、彼らの葛藤と、代理母となる女性のそれぞれの葛藤が描かれています。
子を持ちたいカップルと、子供を育てられないが授かってしまった女性の要求がマッチして一見ウィンウィンな形に見えますが、当然それぞれに葛藤はあります。
本当の母に育てられない子はどう思うのか。自分たちに育てられるのか。
この可愛さ故に手放すことができるのか。
などの葛藤です。
それぞれの決断、行動は人々に勇気を与えるものだと感じました。
8話-ニューヨークの街角ですれ違う感動のラスト
近年日本でも問題となっている孤独死ですが、この物語では夫や妻に先立たれたもの達の残された人生に焦点が当てられていました。
それでも結局は恋が始まれば必ず別れがあるという現実も教えてくれています。
またこのエピソードが『モダン・ラブ〜今日もNYの街角で〜』のシーズン1最終話で、かなり粋な終わり方となっていました。
ここでは、1話から8話で描かれたニューヨークで恋に落ちたり愛を育んだカップルの恋の始まりや途中が、すれ違いざまに同じ時に起こっていました。
それぞれのエピソードの裏側のようなものが見られて最高でしたね。
川に水が流れるように進む物語ですが、終わってみると印象的な場面が非常に多く脳裏に浮かびます。
さすがジョン・カーニー監督。
続編も制作が決定しているそうなので早く見たいです!