
映画『マリッジストーリー』はスカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバーのダブル主演で動画配信サービスNetflix(ネットフリックス)とHeyday Films(ヘイデイ・フィルムズ)の共同製作により生まれました。
本作は、公開前から2020年のアカデミー賞候補作品となるだろうと言われており、非常に期待されている作品でもあります。
また先日、アカデミー賞前哨戦とも言われる非営利団体IFP(インディペンデント・フィルム・プロジェクト)主催の第29回ゴッサム・インディペンデント・フィルム・アワードにて、作品賞を受賞し高い評価を得ています。
加えて、海外最大の映画レビューサイトRotten Tomatoesでは批評家評価96%,観客評価83%とこちらも非常に高い評価を得ています。
期待のかかる作品『マリッジストーリー』は人々に何を伝え、何を残そうとしたのでしょうか。
今回はとことん掘り下げていこうと思います。
映画『マリッジ・ストーリー』ってどんな話?物語を解説。
映画『マリッジストーリー』は離婚のお話です。結婚のお話ではなく、離婚です。
離婚のお話なのに、なぜ「マリッジストーリー」なのか。考えるのも一つ楽しみでしょう。
主人公はスカーレット・ヨハンソン演じるニコールとアダム・ドライバー演じるチャーリー。
ニコールは俳優、チャーリーは舞台監督をしています。日々のすれ違いから離婚をする事になった2人。当初は円満離婚を望んでいたが、これまでの不満が噴出し、ついには離婚裁判へと発展していきます。
夫婦がお互いをどう思い、また、どう感じ取るのかに焦点が当てられています。
また、物語では夫婦の息子ヘンリーをめぐる対立が描かれておりそれに関心を示さないヘンリー役を演じたアジー・ロバートソンが非常に心地よい中和要素のようにもなっていました。
夫婦のこじれはどこに始まり、またどこへ向かっていったのか。感動のラストに涙なしでは観ることができません。
マリッジ・ストーリーで描かれた登場人物が果たした役割とは
映画『マリッジストーリー』では主にニコール&チャーリー夫婦とその家族、離婚弁護士などが登場します。登場人物それぞれを見ていきましょう。
【ニコール】

ニコールはLAで生まれ育ち、女優としてのキャリアを積み上げていました。徐々に有名になってきたときに出会ったチャーリーと2秒で恋に落ち、結婚。
【チャーリー】

チャーリーは舞台監督をしており、ニコールを舞台俳優として受け入れた。彼が舞台監督としてブロードウェイ作品を作り上げるまでに名をあげたのにはニコールの知名度のおかげでもあったという側面もある。
【ヘンリー】

夫婦の息子で陽気なヘンリー。離婚裁判での親権問題により、話し合いの大きな争点となっている。マイペースでおっとりした性格から、夫婦間のわだかまりをうまく中和している。
【ニコールの家族】

ニコールの母と姉はとても賑やか。母はチャーリーと友人のように仲良し。姉は頼りないが陽気で、この2人もまた、本来暗いはずの「離婚」というワードを中和している。
【離婚弁護士】


2人の離婚裁判を担当した弁護士たち。この2人の他にもう1人存在する。
重なりますが、「離婚」という本来暗い内容であるはずにも関わらず終始平和な雰囲気を感じ取ることができたのは、1人息子ヘンリーの純粋さやニコールの母、姉の陽気さがあったからであるはずです。
劇中に流れていた音楽もその場の雰囲気を中和していた気がします。それもそのはず、音楽を担当したのはピクサー映画のトイストーリーなどの音楽を担当しているランディ・ニューマンです。
物語の鍵を握る「2人のいいところ」ニコール、チャーリーにすれ違いはなぜ生まれたのか。
物語は、ニコール、チャーリーそれぞれが「2人のいいところ」を語るところから始まります。
ニコールはチャーリーの、チャーリーはニコールの「いいところ」です。
チャーリーはニコールのいいところについて、
- 気まずい場面で相手を気遣える
- 人の話をよく聞く
- 息子と本気で遊ぶ母親
- 踊りが上手
- 負けず嫌い
- 僕の無理難題に答えてくれる
などをあげています。
ニコールはチャーリーのいいところについて、
- 意志の強さ
- 几帳面
- 節約家
- 服のセンスがいい
- 負けず嫌い
- 徹底主義者
などを挙げています。
2人の共通点は負けず嫌い。この2人の「いいところ」についてはお互いに離婚調停の際に書き出し、読み合う事になっていましたが最終的にはチャーリーがニコールの書いた「いいところ」を知ったのは離婚したあとでした。
なぜ2人にすれ違いは生まれたのでしょうか。2人のすれ違いにはニコールが初めに気がついていました。物語で、ニコールはチャーリーは自分のことを1人の人間として見てくれていないと語っていました。
舞台監督として働くチャーリーとその舞台の役者として活躍するニコール。そんな気持ちになる理由もなんだかわかる気がします。
恋に落ち、愛し合っていたものの、ニコールはチャーリーが自分のことをしっかりと見てくれていないと思い始めたのですね。
お互いのいいところをあんなにもたくさん見つけられるのに、離婚してしまうのはなんだか不思議だし悲しいですよね。
なぜ離婚しなくちゃいけないんだ?
どうしてこうなった?
という感情が終始、心を行き交います。
映画を観た観客が他人事ではないと思い、ありうる事象とともに本当にそれが良いのかもわからない「離婚」という夫婦の終着点かもわからない場所へと向かっていきます。
『マリッジ・ストーリー』が伝えたかったこと。ラストシーンに感動。
「マリッジ・ストーリー」
なぜこのタイトルなのか。それは、この物語が伝えたかったことが
「愛」
であるからだと考えられます。愛情というものはいつでも表現をするのが難しく、ときには感じ取るのも困難なときがあります。
自分は愛を与えていても相手は感じ取ってくれない。よく、「愛情の裏返し」という言葉を耳にしますがニコールとチャーリーが感情を爆発させ、激しく言い合いをするシーンではそれを強く感じ取れた方も多いのではないでしょうか。
チャーリーが感情に任せて言葉を発した後に、流した涙こそ愛で、それに気がつき慰めるニコールにも愛は感じられました。非常に印象的なシーンです。
夫婦の愛ってよく分かりませんが、日常的に愛情表現ってあるんでしょうけど気づかなかったり流したりしてしまってる部分が多いと思うんです。
離婚しようとしているチャーリーとニコール夫婦の間には確実に愛がありました。
当たり前となり気がつがなくなったとき、ラストのニコールが書いたチャーリーのいいところを読むシーンで皆さんが涙した事にその物語の説得力と答えが詰まっていると思います。
アカデミー賞ノミネートは間違いなし。スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバーともにオスカー級の演技には観ていて感心しました。
2020年のアカデミー賞が楽しみですね。
記事内画像出典:『マリッジ・ストーリー』予告編-Netflix