映画の中には面白いだけでなく学べる映画もたくさんあります。
今回は黒人差別という人類にとって苦い歴史を描いた映画をいくつか紹介します。
黒人差別の歴史を学べるおすすめ映画まとめ
黒人差別という言葉を聞いてみなさんはどんな感情を抱きますか?
日本に住んでいるとあまり実感がわかないですよね。黒人差別がひどかった時代に生きていなかった若者たちはさらにあまりピンとこないことでしょう。
ただ一つだけ分かっていることがあります。それは繰り返してはいけない歴史であるということです。
戦争も残酷で決して繰り返してはならない歴史であることは明らかですが、黒人差別もとても残酷であることがわかります。
黒人差別に限らず、人類はこれまでに様々な差別的行為を行ってきました。
それらを繰り返さないためにはまずはそれらを知る必要があります。
もちろん単純にそれがいけないことだということだけを知っておくことも大切ですが、歴史を知らずに「黒人差別はダメだ」というのは説得力がないですからね。
今回紹介するのは以下の3つの作品です。
- ビール・ストリートの恋人たち
- それでも夜は明ける
- グリーンブック
『ビール・ストリートの恋人たち』:差別が原因で報われないカップルの美しくも悲しい物語
まず最初に紹介するのは『ビール・ストリートの恋人たち』です。
この作品は黒人差別が原因で報われないカップルの美しくも悲しい物語です。
19歳の少女ティッシュと彼女の婚約者で22歳のファニーは婚約をしていました。しかし、ファニーは差別的思想を持った警官によって無実の罪で逮捕されてしまいます。なんとかファニーを牢屋から助け出そうとするティッシュですが、彼女はファニーとの子を妊娠していることが発覚します。
結婚できて本当は幸せなはず。子供ができて本当は幸せなはず。でも黒人差別のせいで…。
こんなに悔しい思いをする人間を作り上げた人間は残酷であったに違いありません。
何をするにも黒人が生きづらかった時代。
どんなに幸せな出来事があっても影で黒人差別という四文字がちらついていた時代。
自分がいかに傍観的になっているのかを気付かされます。
邦題は『ビール・ストリートの恋人たち』
ですが、個人的には、原題の方がこの映画が言わんとしていることを表しており良かったのではないかと感じています。
原題は『If Beale Street Could Talk』です。
このタイトルを和訳するとその答えがよくわかると思います。
If Beale Street Could Talkを和訳すると
もしビール・ストリートが話せたなら=ビール・ストリートに口あらば
というタイトルになります。
黒人差別の時代に差別されていた黒人全員が声をあげていたら何を話すのか?
もし黒人差別の地域に住んでいた人たちに話を聞いたらどんなことを話すのか?
どんな思いだったのか?
このタイトルが言いたい事は彼らの感じた辛い、悔しい、苦い思いが君たちにわかりますか?という事なのだと思います。
『ビール・ストリートの恋人たち』を観るうえでのポイントは以下です。
- 黒人であるだけで恋愛すら自由にできない
- 普通ならあり得ない理不尽な扱いを受ける
黒人差別によるこれらの点について深く考えさせられます。
映画『ビール・ストリートの恋人たち』作品情報
監督/バリー・ジェンキンス
脚本/バリー・ジェンキンス
原作/ジェームズ・ボールドウィン『ビール・ストリートに口あらば』
出演者/キキ・レイン,ステファ ン・ジェームズ, コールマン・ドミンゴ,セヨナ・パリス,マイケル・ビーチ,デイヴ・フランコ,ディエゴ・ルナ,ペドロ・パスカル, エド・スクレイン,ブライアン・タイリー・ヘンリー,レジーナ・キング
上映時間/119分
本作の監督を務めたのは2017年に映画『ムーンライト』でアカデミー賞作品賞を含め、4部門の受賞に導いた、バリー・ジェンキンス。
映画『ビール・ストリートの恋人たち』ではティッシュの母親役であるシャロンを演じたレジーナ・キングのアカデミー賞助演女優賞を受賞しています。
結婚の話をファニーの一家と話し合うシーンでの婚約した2人を想った言い争いのシーンは圧巻でした。
他にもゴールデングローブ賞 助演女優賞受賞を含めて、208もの授与候補にノミネートされ、うち85もの賞を受賞しています。
『それでも夜は明ける』:黒人奴隷制度時代の残酷な歴史を描いた実話映画
実話に基づいた物語を原作にしているのでそこから出る生々しさから学べることも大きいです。
映画『それでも夜は明ける』は1841年にワシントンD.C.で誘拐され奴隷として売られた自由黒人ソロモン・ノーサップによる奴隷体験記を基にして描かれた物語います。
この映画を観ることによって学べることは、
- 奴隷制度の悲惨さ
- 奴隷制度に苦しめられた黒人の悲痛な思い
です。
そもそも奴隷制度自体が悲惨で何故そのようなことが起きてしまったのかと悩んでしまう作品なのですが、それだけで終わりません。
奴隷制度によって自由を奪われ、悲惨な人生を歩んだ黒人たちの心情がとてもよく伝わって来ます。
伝わってくればくるほど心に突き刺さるのですが、そこから皆さんが学べることも多いと思います。
「それでも夜は明ける」
という一見希望の光が見えるようなタイトルの作品なのですが、奴隷制度によっていいように利用された黒人達には、希望の光なんてないです。
ソロモン・ノーサップはたまたま運が良かった黒人であるだけで、彼がいたからこそその悲惨な歴史を知ることができたという点では彼が未来への希望の光であったということはできますが、
夜なんて明けません。
黒人奴隷制度という悲惨な歴史を繰り返さないためにも、なぜ黒人が差別される必要があったのか?そんなに簡単な問題ではありませんが、一人ひとりが考えていく必要があるのだということに気がつかされます。
本作から学べることは以下です。
- 黒人の奴隷制度の悲惨さ
- 差別によってもたらされる想像以上の絶望感
ぜひチェックしてみてください。
映画『それでも夜は明ける』作品情報
監督/スティーヴ・マックイーン
脚本/ジョン・リドリー
原作/ソロモン・ノーサップ『Twelve Years a Slave』
出演者/キウェテル・イジョフォー,マイケル・ファスベンダー, ベネディクト・カンバーバッチ,ポール・ダノ,ポール・ジアマッティ,ルピタ・ニョンゴ, サラ・ポールソン ,ブラッド・ピット,アルフレ・ウッダード
配給/フォックス・サーチライト・ピクチャーズ,ギャガ ,サミット・エンターテインメント
公開/2014年3月7日
上映時間/134分
本作はアカデミー賞作品賞他様々な賞を受賞しました。
また、脇役の俳優陣もかなり豪華な顔ぶれなので彼らの演技も見どころの一つかと思います。
黒人差別のある地方に音楽への愛だけで挑んだ実話映画『グリーンブック』
『グリーンブック』は、2019年にアカデミー賞作品賞に輝いた作品です。
先ほど紹介した『それでも夜は明ける』のような暗い雰囲気の映画ではなく、少し明るい映画です。
舞台は1962年のアメリカ。
ニューヨークのナイトクラブで用心棒をしていたトニーとアフリカ系アメリカ人のクラシック系ピアニスト、ドン・シャーリーが黒人用旅行ガイドブックである、「グリーンブック」を持って南部に演奏をしにいく物語です。

この時代に黒人はまだあまり受け入れられておらず、ドンは自身の黒人としての扱われ方に葛藤していきます。
それはトニーも同じです。トニーは白人ですが、黒人の扱われ方に葛藤しているのが次第に垣間見えてきます。
この映画をみれば昔の黒人の扱われ方を知り、葛藤し、過去の歴史を振り返り学ぶことができるでしょう。
また本作の見どころの一つに、ピアニストであるドン・シャーリーと用心棒のトニーの関係性の変化が挙げられます。
彼ら2人の関係性の変化を注視しながら見るとより理解度が福釜あるのではないかと思います。
感動的な映画ではありますが、一方で、とても考えさせられる映画ともいえるでしょう。
映画『グリーンブック』作品情報
監督/ピーター・ファレリー
脚本/ニック・バレロンガ,ブライアン・ヘインズ・クリー,ピーター・ファレリー
出演者/ヴィゴ・モーテンセン,マハーシャラ・アリ,リンダ・カーデリーニ
配給/ユニバーサル・ピクチャーズ,ギャガ
公開/2019年3月1日(日本)
上映時間/130分