『前田建設ファンタジー営業部』は一見よく分からないおかしな営業部の名称なのかと思いがちだが、果たして、素晴らしい映画として完成していた。2020年早々にこのような素晴らしい日本の実話映画を見せてくれたのはまさにサプライズと言えよう。クセの強い登場人物、特に小木博明(おぎやはぎ)の演じた広報グループの上司アサガワは強烈な印象を残した。
おかしな営業部のおかしな企画は実際に存在し、映画で語られた内容が実話であることに終始驚かされた。大手ゼネコンに所属する大の大人が真剣に取り組む姿にこっちまで熱くなって勇気をもらえた。
映画『前田建設ファンタジー営業部』について。あらすじ。
監督 | 英勉 |
脚本 | 上田誠 |
配給 | バンダイナムコアーツ |
東京テアトル | |
公開日 | 2020年1月31日 |
上映時間 | 115分 |
前田建設に実在する、ファンタジー営業部というおかしな部署。マジンガーZの格納庫を「現在の技術および材料で建設するとしたらどうなるのか?」というおかしな発注をアニメ界から受ける。プロジェクトの積算まで出すという中身は大真面目なもの。とはいえ空想の世界のものであるが故に、一見意味のないような企画。それを実現するために試行錯誤し、全力になって取り組むファンタジー営業部の社員達の熱き実話の物語が描かれる。
本作の内容はまさに信じられないような実話。なんだかおかしな内容だが、映画を観終わるとなんだか納得してしまったのは事実だ。
前田建設ファンタジー営業部の社員を演じたのは、ヒット映画に出演し今や人気俳優となった高杉真宙、昨年公開の『愛がなんだ』で話題を呼んだ岸井ゆきの、加えて上地雄輔、おぎやはぎの小木博明などだ。それぞれが個性を発揮してプロジェクトが成功に導かれる様には少しの感動すら覚えた。
意味のない事と言ってもそれは自分たちの基準。後にどのようなサクセスストーリーが待っているか分からないという可能性に期待を持つことができたような気がする。つまり世の中には意味のないことなど存在しないのだろう。本作はそんなことを教えてくれたのだろうか。
実際の前田建設ファンタジー営業部について。現在もウェブサイトが実在していた!

果たして、前田建設ファンタジー営業部は実在した。と、いうより実在するのだ。実際にウェブサイトも存在する。
映画を鑑賞後にこのサイトをのぞくとなんだかすべてが繋がったような気がして心躍らされる事間違いなしだ。一度ファンタジー営業部のサイトを覗いてみて欲しい。サイトをよく観てみると2003年にマジンガーZの格納庫プロジェクトを行った後にもとてもユニークな企画が行われていた。本当に面白いアメイジングな営業部だった。こんなに遊び心のある営業部がこの世に存在していたなんて…。日本の大人達もまだまだ捨てたもんじゃない。
以下がこれまでにファンタジー営業部が行ってきたプロジェクトリストだ。
- 第1弾:『マジンガーZ』光子力研究所格納庫兼プール建設
- 第2弾:『銀河鉄道999』銀河鉄道株式会社メガロポリス中央ステーション(仮称)発着用高架橋建設
- 第3弾:『グランツーリスモ4』オリジナルコース「グランバレー・スピードウェイ」建設
- 第4弾:民間による国際ロボット救助隊の実現検討(コンサルティング業務)
- 第5弾:『機動戦士ガンダム』機動戦士ガンダム地球連邦軍基地ジャブロー
- 第6弾:『宇宙戦艦ヤマト2199』ヤマト建造
- 第7弾:『マジンガーZ Infinity』鉄十字軍団をマネジメント編
最初にこのプロジェクトの連載が始まったのは2003年3月。そもそもの目的はゼネコン汚職事件などによる業界に対するネガティブなイメージを払拭する事だった。映画で描かれたように第一弾で味を占めた営業部の遊び心がさらに高まっているような気がしてワクワクしてしまうのは私だけだろうか。その証拠に第5弾機動戦士ガンダム地球連邦軍基地ジャブローの積算は2,532億円にまで膨れ上がっている。この間完成した新国立競技場ですら建設費が1,569億円なのだからその大規模さがうかがえる。ちなみに映画で描かれた第1弾の格納庫プロジェクトは72億円だ。72億円のプロジェクトであれだけ苦労していたのだから裏では大変な試行錯誤があったのだろう。
驚くのはこれだけではない。番外編というプロジェクトとが2つあったらしい。それが
- Thunderbird トレーシーアイランド
- Domino’s Pizza月面出店計画
の2つだ。注目したいのはDomino’s Pizza月面出店計画だ。ドミノピザはよくCMで宣伝しているだけにとても身近だ。プロジェクトの内容はドミノピザが月面に店舗を建設すること。見積もり額はなんと1兆6700億円だったそうだ。もうワクワクが止まらない。是非これからもこのようなプロジェクトで楽しませて欲しい。
ちなみに現在はPROJECT09ロケットパンチ編が進行中なようだ。
前田建設ファンタジー営業部が残した建設業の底力と可能性。子供心を忘れない大人はかっこいい。感想レビュー。
本作が伝えたかったのは単純に前田建設ファンタジー営業部がこんなことしてました。という事実のみであるはずがない。それも一つにあるかもしれないが、人々が何かを感じたから映画化されたのだし、何かを伝えたかったはずだ。
私が感じたのはやはり「子供心を忘れない大人はかっこいい」ということだ。
大人になってから子供心を忘れてしまっている人は多いのではないだろうか。前田建設ファンタジー営業部はまさに好奇心旺盛で、無邪気だった。そんな姿勢を忘れてしまい、すっかり大人の世界、事情に押しつぶされてレッドオーシャンの中で日々戦い続け、生きている人が多い気がする。今の社会ではとても難しいのだろうか。好奇心旺盛で無邪気になってクリエイティブな人が個性的と言われ敬遠されることもしばしばある。しかし、個性が評価されている社会が現実的に浸透してきている。そして、そこにブルーオーシャンがあるのだ。
個性が勝つ時代が今まさに現実となっている。前田建設ファンタジー営業部はまさに個性丸出しだった。そして“ブルーオーシャン”に飛び込んだ彼らはサイトのアクセス集中によるサーバーダウンという形で勝利を手にしたのだ。
果たして、大手ゼネコンの立派なサラリーマンの大人達が真剣になって、熱くなって、ちょっとバカなことに取り組む姿は、本来は子供のときに真剣に夢に見たようなことだと気付かされ、本作の伝えたかったことがピンときたような気がした。
前田建設ファンタジー営業部の皆さん!こんなに素晴らしいサクセスストーリーをありがとう!素直に感動したし勇気をもらいました。