
本作は主人公ジョジョが、心の中の空想上のヒトラーと対話しながら成長していく過程を描いた何ともユニークな作品だ。
アカデミー賞作品賞にもノミネートされているものの期待したほどの作品ではなかったが、見応えのある内容となっていた。
また、タイカ・ワイティティ監督&出演(アドルフヒトラー役)としても話題を読んでいる。
本作の解説と共にその評価についても紹介していく。
映画『ジョジョ・ラビット』ネタバレ・感想&解説
【あらすじ】
物語の舞台は、第二次世界大戦下のドイツ。10歳の少年ジョジョは、空想上の友達であるアドルフ・ヒトラーの助けを借りて、青少年集団ヒトラーユーゲントの立派な兵士になろうと奮闘していた。しかし、心優しいジョジョは、訓練でウサギを殺すことができず、教官から〈ジョジョ・ラビット〉という不名誉なあだ名をつけられる。そんな中、ジョジョは母親と二人で暮らす家の隠し部屋に、ユダヤ人少女エルサが匿われていることに気づく。やがてジョジョは皮肉屋のアドルフの目を気にしながらも、強く勇敢なエルサに惹かれていく──。
映画『ジョジョ・ラビット』公式サイト
【登場人物】
登場人物 | キャスト | 役柄 |
ジョジョ・‘‘ラビット” | ローマン・デイビス | 主人公 |
アドルフ・ヒトラー | タイカ・ワイティティ | ジョジョの空想上の友人 |
エルサ・コール | トーマシン・マッケンジー | ユダヤ人の少女 |
フロイライン・ラーム | レベル・ウィルソン | 事務のおばさん |
ディエルツ大尉 | スティーブン・マーチャント | 兵隊 |
ロージー・ベッツラー | スカーレット・ヨハンソン | ジョジョの母親 |
ヨーキー | アーチー・イェーツ | ジョジョの親友 |
【作品情報】
監督 | タイカ・ワイティティ |
脚本 | タイカ・ワイティティ |
原作 | クリスティン・ルーネンズ |
音楽 | マイケル・ジアッチーノ |
配給 | フォックスサーチライト |
公開日 | 2020/1/17(日本) |
上映時間 | 108分 |
本作はジョジョの心情の変化によって物語が進んでいくと言える。
つまり、ジョジョの心情の変化が肝であり、この映画が伝えたかったことである。
ナチスとしてのジョジョ

そもそもジョジョは非常に純粋であると言える。
はじめ、ジョジョは空想上の友人がヒトラーであるように、ナチスに対して絶対的な忠誠をしておりユダヤ人に対しては強い偏見を持っている。そして空想上のヒトラーに支配されているのだ。
この頃ジョジョは未熟であったと考えられる。ナチスの洗脳によってユダヤ人を差別しており、自らがナチスに加担していることを誇りに思っている。
しかしそんなジョジョの家には、ユダヤ人の少女が住んでいることが発覚する。
ナチスに絶対的な信仰心を持つ少年がユダヤ人の少女と出会う。これが物語での重大事件である。少女の存在が彼自身を変えていくこととなるからだ。
ユダヤ人少女との出会い。母の死。ジョジョの心情の変化。

ユダヤ人の少女と出会ってしまったジョジョは彼女に対してあからさまな差別的発言を連発する。それもこれも仕方ないことだ。ジョジョはナチスに洗脳され、空想上のヒトラーにも支配されている。
しかしそんなジョジョはナチスを信じてはいるものの純粋な少年であることにかわりない。感受性が豊かな少年だ。相手の気持ちを汲み取ることのできる強い少年なのだ。
ユダヤ人の少女と過ごしていくうちに徐々に彼女が普通の人間であることに気付かされ、好意を持つようになる。
また、母の死もジョジョの心情の変化に直結していると言える。ナチスを信じるもの、それがおかしいと知っているもの。どちらが正しいか段々と明確になっていくのだ。

それはまさに「愛」が世界を救う瞬間だ。ジョジョの少女へと好意、母への愛。つまり愛自体が全てを変化させるのだ。
これにより、ナチスへの信仰とヒトラーへの忠誠心は少しずつ解かれていく。
決定的だったのは親友のヨーキーからヒトラーが裏で悪いことをしていたことを知らされドイツが敗戦すると知った瞬間。
ついにずっと信じていた崩れかけた信仰心が完全に自分の中で崩れ落ちたのだ。
そして、最終的には自身の空想上の友人で自身を支配しているヒトラーを打ち倒すのである。
ラストのダンス意味とは
本作ではダンスを踊るシーンがいくつか出てくる。このシーンには明確なメッセージが込められていた。
結論から言うとそれは魂の解放だ。ジョジョの母ロージーは踊ることは魂の解放を意味すると話していた。
ラストのシーンでジョジョとユダヤ人の少女が踊ったことには意味がある。
ジョジョの場合、ずっと空想上友人ヒトラーに支配されていた。しかしドイツが敗戦し、ナチスへの忠誠心が崩れ、戦争が否定され、ヒトラーから解放されたのだ。
少女の場合、苦しめられていたユダヤ人迫害から解放されたことを知り心を締め付けていたものから解放されたのだ。
この二つの解放が彼らを踊らせたのだ。
映画『ジョジョ・ラビット』の評価は?
一部の人からは非難されてもおかしくない内容を疑うことなく作りあげるタイカ・ワイティティ監督はやはり、素晴らしい監督だ。
ネガティブな題材をジョークに変え、ユニークに完結させてしまう彼の世界観にどっぷりと浸ってしまう。
人間が生きる上での感情の変化、愛を感じることのできる作品であった。
そのような作品であるからこそ評価もしっかりとついてきている。
まずはトロント国際映画祭で観客賞を受賞していることからだ。トロント国際映画祭観客賞では、過去にアカデミー賞作品賞を受賞している『英国王のスピーチ』『グリーンブック』が受賞している。そんなアカデミー賞前哨戦として注目度の高い賞を受賞している『ジョジョ・ラビット』はやはり観る価値のある評価を与えられた作品だ。
また本作は、第92回アカデミー賞では作品賞はじめ、助演女優賞、脚色賞、衣装デザイン賞、編集賞、美術賞の6部門にノミネートされている。
海外での評価も軒並み高く、RottenTomatoesでは批評家支持率80%、観客賞満足度95%となっている。
アカデミー賞発表までにぜひ映画館に足を運んでほしい一本だ。