バットマンはアメコミ実写映画としての人気が非常に高いことで知られている。
その要因のひとつが、悪役ジョーカーの存在があることは言わずもがなであるが、これまでに公開されたバットマン映画の最高傑作を観たことがあるだろうか。
最高傑作について語るべく、今回紹介するのは、鬼才クリストファー・ノーラン監督によって描かれた『バットマ:ビギンズ』から始まる、唯一無二の傑作シリーズだ。
鬼才クリストファー・ノーラン監督のフィルモグラフィを語る
バットマンをテーマとした映画はこれまでに多く公開されている。
これまでに公開されたバットマン映画
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『バットマン オリジナル・ムービー』(1966)
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『バットマン』(1989)
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『バットマン リターンズ』(1992)
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『バットマン フォーエヴァー』(1995)
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『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』(1997)
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『バットマン ビギンズ』(2005)
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『ダークナイト』(2008)
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『ダークナイト ライジング』(2012)
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『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)
ざっと挙げてもこのボリュームだ。
そのことから、しばしば比較の対象となる映画シリーズだ。
大きく分けるとティム・バートン監督によるもの、クリストファー・ノーラン監督によるもの、DCEU(DCエクステンデッドユニバース)である。
今回紹介するのはクリストファー・ノーラン監督によるシリーズだが、この中では間違いなく最高傑作だ。
今では映画業界に革命とも言える衝撃をいくつも起こす鬼才として注目されるクリストファー・ノーラン監督だが、彼が一体どのよつな人物なのかフィルモグラフィを少し覗くと分かってくる。
以下に示されるのが、これまでに彼が描いた主な映画である。
主な作品
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『メメント』
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『ダークナイト トリロジー』
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『インセプション』
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『インターステラー』
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『ダンケルク』
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『TENET』
どれもクセの強い、非常に中身の濃い作品である。
『ダークナイト』シリーズ三部作は上で示した『ダークナイト トリロジー』にあたり、『メメント』以降、『インセプション』と並行して製作された。
ちなみに『ダークナイト トリロジー』を除くと全ての作品が“時間”や“空間”をテーマとした難解映画である。
つまり、クリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト』シリーズ三部作が彼にとっていかに異端的な映画であるのかが分かるだろう。
そして何よりその作品群と共に評価されていることが彼が本物だと示す所以なのだ。
ちなみにクリストファー・ノーラン監督の映画について詳しくは以下の記事にて解説している。
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クリストファー・ノーラン監督おすすめ映画6選-時間と空間を操る天才の難解映画に迫る
クリストファー・ノーラン監督といえばこれまでに映画館での新たな映像体験を提案し、大ヒットを連発してきた人物という印象だが、彼はこれまでに一体全体どのような作品を生み出してきたのだろうか。 例えば最新作 ...
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クリストファー・ノーラン監督の三部作がバットマンを描いた映画の中では、最高傑作だということが分かったところで、今回はさらに細分化してクリストファー・ノーラン監督の三部作の中でどれが最高傑作であるかまで深掘りするが、その前にざっとそれぞれの作品についても触れておこう。
ダークナイトシリーズはこの順番で観ると良い

出典:Rotten Tomatoes公式サイト
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『ダークナイト』シリーズ三部作を観る際に、しばしば視聴順を問われることがあるが、公開順に観ることを勧める。
というかそれ以外に選択肢はない。
シリーズ三部作の公開された順番は以下である。
『ダークナイト』三部作公開順
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『バットマン:ビギンズ』
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『ダークナイト』
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『ダークナイト:ライジング』
順番に紹介していく。
『バットマン:ビギンズ』
あらすじ
幼少期、井戸に落ちた際にコウモリの群れに襲われたブルース・ウェイン。オペラを見ているときに会場でその記憶がよみがえり両親と共に帰路についた。その途中で両親は強盗に襲われ、亡くなってしまう。
舞台はそれから14年後。復讐を果たすべくもがくブルース・ウェインだったが、ゴッサムシティの腐敗を前に強くなることを決意する。
予告編
おすすめポイント
アメリカ合衆国にはMARVELコミックスとDCコミックスというスーパーヒーロー漫画の2社が古くから人気を博しており現在も君臨し続けているが、本作のバットマンはDCコミックスのキャラクターである。
バットマンは、特にスーパーマンと共に非常に人気が高いことで知られている。
そのことから、バットマンの映画が公開される際の期待度はいつでも高く、その期待を裏切らないことが重要であるため、製作陣にはかなりのプレッシャーがかかると考えられるが、興行収入を見る限り大成功を収めた。
本作で描かれるのはバットマン誕生の物語で、いかにしてバットマンが誕生し、どのように活躍していくかが語られる。
スーパーヒーロー誕生の物語は、その背景などと合わせて描かれることが多いため非常に面白いことが多いが、それゆえに失敗できないとも言える。
特に本作で注目なのはゴッサムシティの雰囲気である。
組織が腐敗し、鬱々とした空気感のゴッサムシティはまさに観客の見たかったゴッサムシティそのもので、他のどの作品よりも印象的となっている。
また、その裏で街を救おうと奮闘するバットマンの武器庫の新鮮さ、異世界感がクリストファー・ノーラン監督のこだわりの撮影によって描かれている部分にも注目していただきたい。
本作の成功が次作『ダークナイト』の大成功に繋がったことは間違いないと言える。
『バットマン:ビギンズ』に登場したヴィラン(悪役)
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スケアクロウ
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ラーズ・アル・グール
『ダークナイト』
あらすじ
ピエロのマスクをぶった集団がゴッサムシティの銀行を次々と襲う。彼らは互いに裏切り合い、最後のひとりになってしまった。
生き残った男こそジョーカーなのであった。彼はバットマンを倒すべく、ある計画を企んでいた。
予告編
おすすめポイント
本作で最も注目してほしいポイントはやはり、ゴッサムシティの狂気ジョーカーか登場するという点だ。
前作ではスケアクロウといったDCコミックスでは主要のヴィランが登場するが、やはり宿敵ジョーカーとバットマンが対峙する構図はいつだって熱いのだ。
本作に登場するジョーカーはゴッサムシティの腐敗、そこに住む人々が心の底に持つ狂気を前面に押し出した姿、立ち居振る舞いでDCコミックスが誇るヴィランそのものだ。
『ダークナイト:ライジング』を観れば、なぜジョーカーというヴィランが、単にヴィランとしてだけでなくキャラクターとして人々に愛されているのか、その理由が見えてくるに違いない。
ヒーロー映画ではヴィランの質が物語の出来栄えを左右するといっても過言ではないが、本作のジョーカーは史上最高の出来栄えを誇るヴィランだったといえる。
史上最高のジョーカーを今後誰も達成することができないかもしれない最高の演技力で見事に演じきったのが名優ヒース・レジャーだ。
彼はその好演が高く評価され史上4番目の若さでアカデミー賞助演男優賞を受賞したが、その受賞を耳にする前に生涯を終えている。
ちなみに本作が作品賞にノミネートされなかったことは物議を呼んだ。
また、CGを映像に利用することを好まないクリストファー・ノーラン監督によって本作の撮影ではビルが丸ごと一棟爆破されるなどかなり大掛かりなものとなっている。
他にも超大型トラックとバットモービルによる迫力満点なシーンは何度見ても興奮するので注目してほしい。
『ダークナイト』に登場したヴィラン
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ジョーカー
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トゥーフェイス
『ダークナイト:ライジング』
あらすじ
舞台は8年後、地方検事ハービー・デントの名を冠したデント法によってゴッサムシティの組織犯罪はほぼ全て根絶されていた。
バットマンとしての活動から引退していてブルース・ウェインは自らの会社を乗っ取ろうとするものによって混乱に陥れられてしまう。
予告編
おすすめポイント
本作はシリーズ三部作の完結編で、興行収入の面では前作同様1000憶円の大台を突破した。
前作に登場したジョーカーの社会的な影響力は高く、彼の考えを模倣したかのような事件が発生したこともあり公開が危ぶまれたが無事大成功を収めた。
物語の舞台が前作から8年後という事もあり、ゴッサムシティは以前とは異なる状況となっていることがポイントだ。
また、自らの目的を達成するためにアン・ハサウェイ演ずるキャット・ウーマンも登場しバットマンと共闘する。
華奢で美しい風貌からは想像できない強さを持つ彼女のギャップにきっと熱くなってしまうだろう。
そして、ヴィランとしてはベイン(トム・ハーディ)が登場する。シリーズ史上最強の敵にどう立ち向かうのか予測不能だ。
本作でもアメフト競技会場の爆破など、かなり大掛かりな撮影が行われ、映像体験としてかなり楽しめることにも注目してほしい。
『ダークナイト:ライジング』に登場したヴィラン
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キャットウーマン
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ベイン(ラーズアルグールの手下だが、破門)
『ダークナイト』シリーズ三部作最高傑作について
ここまで『ダークナイト』シリーズ三部作について紹介したが、ここからはシリーズ最高傑作について紹介する。
結論から言うと、当サイトが最高傑作としてとらえているのは二作目の『ダークナイト』だ。
本作を最高傑作と位置付ける理由を挙げるときりがないが、整理すると以下のようになる。
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ジョーカーの存在
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冒頭シーン
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映像
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物語
ひとつずつ解説していく。
ジョーカー
まず間違いなく言えるのがジョーカーを演じた故ヒース・レジャーの熱演が評価されていることにある。
バットマンというヒーローにはジョーカーというヴィランがやはり欠かせないのだが正に乗り移ったかの如く演じきっている。
また、ジョーカーというキャラクターそのものがゴッサムシティの狂気であり腐敗を表しており、そのことが悪役以上の何かをジョーカーに印象付けている。
そんなジョーカーの凄さというのは、例えば2019年に公開された映画『ジョーカー』が示している。本作はヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した傑作だが、物語にバットマンは登場しない。
ジョーカーそのものの出生、狂気、そしてゴッサムシティにどことなく感じる虚しさが描かれているのだがあれだけの大ヒットを記録した。
この事実はジョーカーがキャラクターとしていかに成熟しており、中身が濃いのかを証明した。
冒頭シーン
また、『ダークナイト』では冒頭シーンの素晴らしさがしばしば語られる。
ピエロのマスクをかぶった多くのジョーカーが互いの目的を達成するために殺し合うシーン、そして、本物のジョーカーが登場するシーンは決しては忘れることができない。
ほとんどこのシーンのみでジョーカーというキャラクターが一体どのような狂気を持ち合わせているのかという事を結論付けているようなものだ。
映像
本作はアカデミー賞8部門にノミネートされており、その中に撮影賞・視覚効果賞・美術賞・メイクアップ賞・編集賞が含まれている。
どれも映像に直結する部門でのノミネートであるわけなのだが、これに関しては誰も文句なしだろう。
先ほども紹介したように、もともとクリストファー・ノーラン監督は映像に関するこだわりがかなり強く、撮影中にカメラマンにくっついて回るほどだ。
これまでの『インセプション』『インターステラー』などを観ていただければ一目瞭然だが、どれも映像の迫力がずば抜けている。
『ダークナイト』ではビル一棟丸ごと爆破や、超大型トラック大回転の映像がCGなしで作り上げられているので是非注目してほしい。
物語
最後の物語についてだ。
最も重要な部分であるが本作ではクリスチャン・ベール演じたバットマン、ヒース・レジャー演じたジョーカーのキャラクター設定がしっかりしているため物語の質も自然と向上していた。
前作で語られたゴッサム・シティの腐敗、主に警察組織と犯罪組織の癒着にどう立ち向かうのか。そしてゴッサム・シティが生み出してしまったジョーカーという狂気にどう対処していくのかが非常に興味深い。
結末もかなり印象的だ。(この結末が次作『ダークナイト:ライジング』の大成功に繋がった。)
いずれにせよ『ダークナイト』を最高傑作とするシリーズ三部作は非常に中身の濃い傑作となっている。是非『バットマン:ビギンズ』から観て欲しい。