2019年に公開された、本作は現代を生きる若者にとって非常に突き刺さる作品となっていることを断言することができる。
10代後半から20代の青春を生きる若者にぜひ観てほしい作品だ。
チワワちゃんは若者になにを伝えたかったのか、何を残したかったのだろうか。
気になる犯人についても考察していく。
チワワちゃんを殺した犯人はいったい誰?
あらすじ
ミキがいつものミュージックバーで、仲間のヨシダ、カツオ、ナガイ、ユミらと飲んでいる時、ヨシダの新しいカノジョとして“チワワ”が現れた。以前、ヨシダのことが好きだったミキは、フクザツな気持ちで二人を見ていた。
その時、バーテンダーのシマから、VIP席にいる男たちのバッグの中に、政治家に届ける600万円が入っていると教えられる。皆がザワつくなか、意を決したチワワが、あっという間にバッグを奪って、走り出した!その日、東京湾バラバラ殺人事件の被害者の身元が判明した。千脇良子・20歳・看護学校生。ミキはそれが、自分の知っている“チワワちゃん”のことだとは思わなかった。
引用元:映画『チワワちゃん』公式サイト
登場人物
登場人物 | キャスト | 役柄 |
ミキ | 門脇麦 | 主人公 |
ヨシダ | 成田凌 | チワワの彼氏 |
カツオ | 寛一郎 | ヨシダの親友 |
ユミ | 玉城ティナ | チワワの親友 |
チワワ | 吉田志織 | バラバラ殺人の被害者 |
ナガイ | 村上虹郎 | チワワに片想い |
ユーコ | 栗山千明 | ファッション誌のライター |
サカタ | 浅野忠信 | チワワの新しい彼氏 |
作品情報
監督 | 二宮健 |
脚本 | 二宮健 |
原作 | 岡崎京子「チワワちゃん」 |
配給 | KADOKAWA |
上映時間 | 104分 |
公開日 | 2019年1月18日 |
本作の結末においてチワワちゃんを殺した犯人は明らかになっていない。
誰が殺したのか分からなければ殺された理由すらも明らかになっていない。
しかし私はこう考える。チワワちゃんを殺したのは間違いなく「社会」であるということを。誰が殺したとかそういうのではなく、もともと犯人は「社会」という設定だったのではないかと。
映画『チワワちゃん』が伝えたかったこと。若者に残したメッセージ。

出典:ABEMA TIMES公式サイト
現代の社会はSNSをうまく利用してあまり接点のない友人同士がつながることができることを実感している。
友達の友達という関係から友達になる場合もあるしそのスピードも速いように感じる。
実際にチワワちゃんがいたグループはもともとあまり接点のないものたちが友達の友達、友達の恋人というような関係性で集まって楽しんでいた。
その中でチワワちゃんはマスコット的なキャラクターである上、その本名を知るものも居なかった。
彼らのグループは19歳から20代前半の自らが見ている世界の変化点にまさにいたと言える。
劇中に出てきた言葉を使えばチワワちゃんとそのグループが過ごした期間はまさに「ゴールドラッシュ」のようなものであったと言える。
若いが故の、将来への希望。人間関係の真実を知ることによる未来への絶望。
彼らは間違いなく自由を求めていた。それは自由になれていることを実感した年齢であるからこその事だし、もっと自由になりたいと思ったからでもあるだろう。
19〜20歳となれば、大学生や専門学生となりバイトをしてお金を稼いだり、恋をしたり、お酒を飲んだり、大人に近づいたような気がして、大人になれた気がするのだ。今を生きる大学生や若者達にはきっとそう感じているものも多いだろう。
彼らは、お金があれば楽しいことができると知っていた。お酒を飲めば舞い上がることも知っていた。友達と過ごせる時間がもっとも楽しいことも知っていた。
だからこそ彼らは自由を求めて600万円を強奪した。みんなで悪いことをするリスクを楽しんでいたし、協力したことによる達成感も感じたのだろう。
そしてチワワちゃんは表面上生きるのはうまい。しかし一方では下手だったのかもしれない。チワワちゃんはみんなを楽しませることができる。自分が楽しむことでみんなを楽しませる。しかし、チワワちゃんは本当に楽しんでいたのだろうか。チワワちゃんは頭が良く、みんなの考えに合わせるのがうまいようなタイプだ。
劇中にチワワちゃんはこんなことを語っている。
「こんなに楽しい時間がずっと続けば良いのにと思った時、それはもう会わなくなるサインなんだよ。」
チワワちゃんはみんなに愛されたいと思っていたし、みんなを失いたくなかった。しかしそれは最後には失われてしまうことを知っていたのだろう。
正直、チワワちゃんにとって現代の社会は生きづらいものだったのではないかと感じた。
「バラバラ殺人」という言葉にもこの物語を知った後にはなぜか深い意味を感じてしまった。社会に押しつぶされ、バラバラにくずれてしまったチワワちゃんを暗に示しているのではないかと。
何にせよ、チワワちゃんが死んでしまったことから始まり、若者達の回想によってチワワちゃんという人物像が出来上がっていくストーリー構成は素晴らしかったとしか言いようがない。
間違いなく2019年の邦画の傑作としてお勧めしたい一本だ。