近年映画業界をざわつかせ、確固たる地位を築き上げた映画配給会社「A24」を皆さんはご存知ですか?
多くの名作映画において、目立つのは役者であったり、監督であることが多く普段映画をただ楽しむだけの人は映画配給会社などあまり気にしないことが多いでしょう。
しかし、もしも彗星の如く現れて世界の映画界で称賛される映画をいくつも立て続けに配給している会社があったとしたら、なんだかワクワクしませんか?
少しそれは大袈裟かもしれませんが、「この映画はあの配給会社か。だとしたら面白いに違いない」こんな現象が起こります。
そして、そんな現象を起こしつつある、起こしている新進気鋭の映画配給会社が「A24」です。
「A24」がこれまでに配給した主な作品と歴史
「A24」がこれまでに配給した作品は、映画界の話題をかっさらっていった作品ばかりでさ。
最初にこの映画スタジオが大きな注目を浴びたのは『ルーム』です。
本作は2015年に公開された作品でアカデミー賞、ゴールデングローブ賞含む数々の賞にノミネートされ賞レースを賑わせました。
本作に出演したブリー・ラーソンはアカデミー賞やゴールデングローブ賞において主演女優賞を受賞し、一躍スター俳優へとのし上がりました。
ブリー・ラーソンはその後『キャプテン・マーベル』や2019年に世界歴代興行収入の歴史を塗り替えた『アベンジーズ/エンドゲーム』に出演し話題を呼んでいますね。
また、トロント国際映画祭でも観客賞を受賞しています。
トロント国際映画祭はこれまでに『英国王のスピーチ』『それでも夜は明ける』『グリーンブック』などが観客賞を受賞しておりアカデミー賞作品賞に最も近いことがわかる賞だとも言われています。

その後も「A24」の快進撃は止まりません。
翌年2016年に公開された『ムーンライト』を知らない映画ファンはいないでしょう。
本作は第89回アカデミー賞で作品賞含む3部門を受賞しました。
制作費が150万ドルと小規模である中、このような結果となったのは異例中の異例。
この出来事がきっかけで「A24」は一躍世界の映画界にその名を轟かせました。
特に本作は映画批評サイトRottenTomatoes≫では批評家支持率98%観客満足度79%と言う素晴らしい数字を叩き出しています。
また、本作はバリー・ジェンキンス監督と主要出演者が全て黒人ということもあり、ホワイトオスカーと揶揄されていたアカデミー賞のこれまでの空気感を変えた作品でもあります。
ちなみにマハーシャラ・アリは『ムーンライト』で助演男優賞を受賞し、その後も『グリーンブック』で二度目の助演男優賞を受賞するなど活躍の1つのきっかけとなりました。
2016年にはこの他にも『ウィッチ』、『ロブスター』など世界的に評価されている作品を手掛けています。

その後も安定して良作を世界に配給し続けています。
2017年には『Good Time』『フロリダ・プロジェクト/真夏の魔法』『レディ・バード』と言った話題作を公開しました。
『Good Time』ではサフディ兄弟が監督をした作品としても注目を集めましたが、A24作品としてNetflixで配信されている『アンカット・ダイヤモンド』もサフディ作品として注目されています。
そして日本でも話題を呼んだのが『フロリダ・プロジェクト/真夏の魔法』です。
本作は2008年のリーマンショックの余波によって苦しめられる貧困層を6歳の主人公の視点から描いておりカンヌ国際映画祭で上映され非常に高い評価を得た作品です。
そしてその年に最も注目を集めたのは『レディ・バード』でしょう。
この作品では出演者の確かな演技力も支持されました。
特にシアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフの演技が絶賛されています。

2018年にはホラー映画のジャンルでもファンを大いに盛り上げだ作品を配給しました。
それが『ヘレディタリー/継承』です。
本作は2018年最も怖い映画として紹介されているが、21世紀史上最恐、ここ50年で最高のホラー映画といった声も上がるくらいの作品です。
本作で注目されたのがアリ・アスター監督で彼は『ヘレディタリー/継承』が初の長編ホラー映画であったものの監督・脚本家として世界中で大絶賛されました。
また、「A24」が配給するホラー映画の新作『ミッド・サマー』も絶賛されており、日本でも話題になりました。

「A24」って一体どういう会社?
果たして、「A24」とはいったいどのような会社なのでしょうか。
ここまで数々の作品を紹介したのでその凄さは分かっていただけただと思います。
しかし、驚くのはまだ早いです。
なぜならA24が設立されたのがたったの7年前の2012年だからです。
長い映画の歴史の中においては非常に歴史の浅い映画配給会社であることがわかります。
設立したのはダニエル・カッツ、デヴィッド・フェンケル、ジョン・ホッジス。専門とするのは
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映画製作、出資、配給
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テレビ番組の製作、出資、配給
などです。
「A24」が台頭するきっかけの一つはワインスタイン・スタジオの腐敗があるとも言われています。
ワインスタン・スタジオは経営者のワインスタインが長年にわたりセクハラを行なっていたとして批判されて、経営が悪化し、破産にまで追いやられました。
これは日本でも話題となり「#MeeToo」運動のきっかけです。
そして、これにとって変わるかのように「A24」は台頭していきました。
会社名の由来はイタリアの高速道路⁈
初めてこの配給会社を知った時、アルファベットと数字の並びのみで、何だか洗練された社名だなと感じた。
この社名の由来がユニークだった。創業者のダニエル・カッツが設立を決心したのがイタリア旅行の際にアウストラーダA24という高速道路を運転していた時だったという。
イタリアのど真ん中をぶった切るような道路だ。イタリア映画の名作にも数多く登場するので是非一度ドライブしてみたいですね。
映画配給会社が行う事ってどんな事?
そもそも映画配給会社にはメジャースタジオと独立系が存在します。
ここまで紹介した「A24」と「ワインスタイン・スタジオ」は独立系映画会社です。
メジャースタジオは皆さんもよく知る
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ウォルト・ディズニー・スタジオ
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ワーナー・ブラザーズ
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ユニバーサル・スタジオ
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20世紀スタジオ
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ソニー・ピクチャーズ
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パラマウント・ピクチャーズ
の6つのスタジオです。
ではメジャースタジオと独立系の違いはいったい何なのでしょうか。
そのひとつとしてあげられるのが規模です。
規模が違うと配給できる映画の規模も異なってきます。
そしてもう一つが自社スタジオを持つか持たないかです。
簡単に言うと自社スタジオを持つメジャースタジオは映画を買い付ける必要がない場合が多いですが、自社スタジオを持たない独立系は自ら映画を買い付ける必要があります。
今後も注目の作品が続々(2020年以降)
【あわせて読みたい】
A24が2020年に公開予定の映画と日本公開未定作品をまとめて紹介
最後に、「A24」の作品のうち日本で公開されるものを紹介します。
『ミッドサマー』2月21日
先ほども少し紹介しましたが、本作はアリ・アスター監督の長編ホラー映画第2作です。
公開されている公式ポスターでは、ホラー映画であるにもかかわらず非常に明るい見た目で色鮮やかであることが特徴的ですが、そこが罠であることはあからさまに分かります。
「明るいことが恐ろしい」がキャッチコピーとなっているくらいです。
ちなみにタイトルのMidsommar(ミッドサマー)は夏至祭(スウェーデン語)を意味し、家族を不慮の事故で失った主人公ダニーが大学で民俗学を学ぶ仲間と共に90年に一度の祝祭に訪れることから全ての物語が始まります。
色鮮やかで楽園のような景色は、果たして私たちにどのような恐怖体験をもたらしてくれるのでしょうか。
『ヘレディタリー/継承』での成功があっただけに、アリ・アスター監督,「A24」の作品には期待してしまいます。
【感想・考察】映画『ミッドサマー』ラストで本作が伝えたかったこととは。※ネタバレあり
『フェアウェル』4月10日
ガンで余命3ヶ月の宣告を受けたナイナイは中国に住むビリーの祖母。最後に会うためにビリーとその家族はニューヨークを飛び立った。ナイナイに病のことを隠すためにみんなで集まる口実としていとこの結婚式をでっちあげる。しかし本当のことを伝えるべきと訴えるビリーと一家で葛藤する。
まず抑えておきたいことが、本作が数々の賞を受賞していることです。
特に、ゴールデン・グローブ賞ではオークワフィナが主演女優賞を受賞し注目を集めました。
彼女の演技には大注目です。
ちなみに外国語映画賞にもノミネートされていましたが本年度アカデミー作品賞の『パラサイト半地下の家族』という強力な作品がノミネートされていたため、受賞を逃しています。
そして本作は驚くべきことに全米4館公開からのスタートであったということです。
その後口コミによってその評判が広がり、瞬く間に賞レースに割って入りました。それくらい注目の作品です。
『WAVES/ウェイブス』4月10日
本作の注目すべきポイントは、2つの物語で構成されていることです。
1つ目は鬼気迫り、2つ目は穏やかな雰囲気となっています。
そしてもうひとつ注目したいこたが、音楽です。
作品全体で31曲が採用されており、タイラー・ザ・クリエイターやカニエ・ウエストなど注目のアーティストが名を連ねています。
また、これらの楽曲は登場人物の感情とリンクするように構成されていてそこが注目ポイントでもあります。
【感想・解説】映画『WAVES/ウェイブス』-タイトルに隠された意味とは※ネタバレあり
そしてもう1つ『アンカット・ダイヤモンド』が現在Netflixで配信中です。こちらも見逃せません。
映画『アンカット・ダイアモンド』【考察】ネタバレ感想・徹底解説。物語の答えはタイトルにあり。
この他にも『First Cow(原題)』(2020年3月6日全米公開),『Saint Maud(原題)』(2020年3月27日全米公開),『Minari(原題)』(公開日未定),『Zola(原題)』(公開日未定)などが「A24」が配給する予定です。